可能性を見付ける指導を
中山しのぶ
ヴァイオリニストとして活動の傍ら、長くヴァイオリンのレッスンを行っています。
3歳から、80代までの幅広い年齢層の方々とご一緒しましたが、人間の身体は、個人により、実に様々な特徴があり、そして可能性があります。
アマチュアの方も、プロフェッショナルの方も、それぞれに、疑問だったり、悩みがある事と思います。一人で抱え込むよりも、一度、他人の目を通して見る事で、問題解決の糸口を掴む事もあるかもしれません。
私の父は作曲家でした。幼い頃から、素晴らしい演奏を多く聴く機会に恵まれた事、そして今も、常に音楽や美術の友人達に、インスパイヤされている事が、とても恵まれていると思っています。
老いて神経難病に侵された父と共に、闘病生活を送りましたが、生きようとする意思、そして、何度も死線を潜りながらも、固まりかけた肉体が、リハビリによって蘇り、歩行を可能にして行くのを目の当たりにして、人間の再生能力は本当に素晴らしいものだと思い知らされました。
こうして考えると、ヴァイオリンを弾く能力に、年齢や、怪我などで、限界を設ける必要などない、と、思えます。
最後に、イギリス留学時、私に最高の指導をして下さった、師のジーン・ハーヴィー女史に、心からの感謝と敬愛を捧げます。彼女の豊かな音楽と、また時間のある限り、練習を続ける謙虚な姿勢、そして弟子を占有する事なく、その可能性を最大限に引き出す為に、進んで他の教師の元へもレッスンを受けに行かせ、意見交換をするような、稀有な心の広さを持った師匠でした。彼女と出会えた事が、ここまで私を支え、演奏のみならず、教える事も、諦めずに続けさせてくれました。